去年読んだイチオシマンガが「岳」。その最新刊6巻が出てました。日本アルプスの山岳救助の様子を描いた人間ドラマです。1話完結でどの話も短くてさくっと終わってしまうけど、かならず、じーーーーんっと余韻が残るものばかりです。しんどい山登りには興味ないし、山のことも登山のこともまったく無知ですが、素人の私にも、山の美しさや恐ろしさ、山登りの危険さやおもしろさ、山に登る人たちのやさしさや弱さ、強さが伝わってきます。
穂高とか立派な山も出てくるのですが、けっしてエベレストなどすっごい山の話ではなく、中には私でも登れるかもしれないなあ、と思える(錯覚だけど)、シニアに人気の低めの山やポピュラーな富士山が出てきます。そのあたりの身近さやリアリティが、いままでのすっごい山岳物語とは違うかもしれません。だから登場する人たち・・・つまり、遭難する人たちも、ジジババや中年サラリーマン、高校生、OLとか、ふつうの人たちも多いです。何十年も前に雪山で遭難した息子を探す画家のおじいちゃん、失恋のうっぷん晴らしに友だちと一緒に山登りをしているOL、大学の山岳部の新人歓迎登山組など、ふつうに生活している人たちが、山で遭難した瞬間、生き死にの瀬戸際に放り込まれるのでした。
ひょんなことから出くわす生き死にの瀬戸際では、その人らしさが丸裸になります。このマンガ・・・たぶん山に登る人はということなんでしょうが、いい人ばかりです。人を信じることができる人たちだし、懸命に生きようとし、また、懸命に人を救おうとがんばります。
主人公は助かった人にも死んでしまった人にも、かならず「よく、がんばった」と称賛をおくり、だきしめます。みんな、とっても、がんばってます。
とはいえ、お涙ちょうだいのあったかストーリーではありません。なれないうちは、ぎょっとする場面が多かったです。マンガだから最後は救助が成功してやったー!で締めくくられるかと思って、のほほんと読んでたら、主人公が遭難者を発見して励まして、遭難者の意識が戻って、がんばって、がんばって、がんばって・・・るうちに、ぽっくり死んじゃうケースもあります。遭難者が助からないとわかって、まだ生きているのにさっと見切りをつけて、助かるほうに集中するケースもあります。死んじゃった人は、物体としてロープでヘリコプターにつるされて運ばれます。過酷ですが、読後感が「山登りって怖い」ではなくて、山っていいなあ、山に登る人ってすてきだなあって思えるのが、このマンガのすごいところだし、ほんとのところ、山登りってそういうことなんだろうなあと、ぼややーんと思ったりしてます。
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