「花のレクエム」辻邦生・新潮社
久々に辻邦生さんの小説を読みました。
透明感あふれる、みずみずしい話の数々。
なんとなく人と距離を置いたような
少し醒めたような温度が弥絵は好き。
じゃ、冷たいのか・・・というとそういうわけでもなく、
片恋の少女を遠くから見つめ、
告白できずに大人になってしまった人の
胸キュンな感じにみちみちているのでありました。
村上春樹が好きな人は、けっこう好きになるタイプ
の小説じゃないかなあ。
辻邦生の本にはまっていたのは中学時代。
「秋の朝 光のなかで」
「十二の肖像画による十二の物語」
「十二の風景画への十二の旅」
「夏の海の色」
「もうひとつの夜へ」などが、 父の本棚にあり、
「まあ!世の中には、こんなに
読みやすくてステキな本がっ!」と思ったんす。
「十二の〜」シリーズはヨーロッパのブリューゲルなどの名画から
インスピレーションを受けて書かれたシックな物語で、
絵本みたいだったし。
なにせ、父の本棚って小難しい本が並んでいて、
(「男はつらいよ」もあったけど)
普段は、背伸びして、手当たりしだい、
無理やりでも読んでいたから、
すらすら読めて、胸キュンになる辻邦生の本は貴重でした。
でもって、当時は世の中の多くの殿方は18歳を過ぎると
辻邦生の小説の主人公のような・・・
物静かで、詩的で、物思いにふける、
ちょっとはにかんだような青年になる
(で、結核になったりする)
と、信じていたのであります。
今、考えてみれば、うわっ、幻想!
・・・・・・ま、これは、自分が20歳になったとき、
「大人の女性」とイメージしてた姿に、
じぇんじぇんなれてなくて、
ショックを受けたのと似た話です(^-^;
ところで、この本は、12の短編小説集。
全作品400字きっちりの中で、起承転結が完結しています。
終戦直後の松本高校時代に、
やることがなくて友達と競争するように夢中になって
400字きっかりの小説を書いて遊んでたそうな。
そういうことを思い出して書いてみたんですって。
切れ味がよくて、
吟味されているだろうけど
なにげなく使われている言葉がよいです。
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