「ガラテイア2.2」
リチャード・パワーズ
みすず書房
主人公はリチャード・パワーズ。
作者と同姓同名なのだ。
物理学者であり、小説家でもある彼は、
とある研究所に客員として呼ばれ、
(95年作の小説なので、研究所で流行っているのは
もちろん「複雑系」。
サンタフェ研究所を思い出しました)
他のメンバーと一線を画す風変わりな人工知能の博士と
人工知能の女性、ガラテイアを作り、
記憶、感覚、感情を吹き込んでいく・・・・という、物語。
1966年にMITで作られた人工知能の
対話型プログラムの名前がイライザ。
バーナード・ショウの小説「ピグマリオン」
(「マイ・フェア・レディ」の原作) に
出てくる花売り娘の名前がイライザって子で、
上流階級のレディに育て上げるため、
殿方2人が、彼女に言葉を教え、
教養を叩き込んでいくんだけど、
最後には男たちの言いなりにはならず、
「人形」じゃなくて一人の自立した女性になるってな話。
ガラテイアの名前はこの辺りから来ている
んじゃないかしらん?
ガラテイアとは、ギリシャ神話のピグマリオンが人形にほれ込んで、
アフロディーテに頼み込んで魂を入れてもらって
作り出した女性。
この手の文学と科学を股にかけた
シャレ(?)は、めっちゃ多そう。
んでもって、この物語、古今東西の歴史、文学、
アート、音楽に精通していると
そうとう面白く読めるはず
(注釈がいっぱいあるから、知らなくても楽しめます)。
科学と文学が大勝負してるような趣。
パワーズさんには、プログラムや人工知能の
知識もものすごくあって、
「知的とはどういうことなのか?
記憶とは何か?その住み処があるとして、
それはいったいどこなのか?
思考とはどういう姿をしているのか?
どうして理解や、美的趣味や、気質が生まれるのか?・・・・・・
推論を重ねた結果、
僕は認識というものをさっぱりわかっていない
という結論に達した」
という一文を見ても、どこがわかっていないのか、
めっちゃ正確に把握できてるのだなあと感心。
これら疑問が物語の中で解決されていくわけなんだろうから、
結末がとっても楽しみ♪
マービン・ミンスキーさんはこの本を読んだら
どう思うかしら?
と、長々と書いたけど、
実は、2時間かかって、
まだ、32ページしか読めてないよぉぉ。
どえらい時間がかかりやす。
久々に手ごたえのあるハードな内容。
んでもって、久々に、見事な虚構
・・・物語が嘘っぽいってんじゃなくて、
文学だってアートだって、
すべて虚構なんですけど、
虚構が虚構として自立したものになるには、
恐ろしく完成度の高い世界観と
技術が必要なわけで、
お見事〜って感じ。
出だしの1ページ目から、引き込まれつつも、
「この表現は比喩なのか?
事実として書かれているSFなのか?」と
疑問符いっぱいになって、
どのように読めばいいか、
その読み方に戸惑ったりしたくらいなのだ。
(10ページくらい読んだら、解決しました。
比喩がうまい・・・というか
比喩の跳躍がけたたましくすごいのだ)。
最近、科学の方が刺激的で面白いなあ、
現実の方がよっぽど
「小説より奇なり」だわさーと思ってたけど、
いやいやどうして、
パワーある小説がここにあるじゃん♪とわくわく中です。
※注※
三島由紀夫の「憂国」が出てきました。
でもって、「三島する」ってのが「(割腹?)自殺する」って
意味で使われていることに苦笑しました。なるほど。
はじめましてーこのプログ見て。俺の店も知的だなと・話はだいたい解かるつもりでいたけど、深く参考になりました。ありがとうございます。またの機会に¥motoki.0501docomo.ne.jp携帯のが得意かも-
投稿情報: 美容室ガラテイア | 2007-09-06 15:34