文芸春秋は有名な文芸誌。
文芸誌っていったいだれが読んでいるんだろう?と、
ここ数年、不思議に思ったりもするんだけど、
ま、それはおいといて・・・
文芸春秋の80年の歴史の中で、
えりすぐりの文を選んでまとめた本。
2500円は高すぎると思うけど、
もともとそんなに売れないだろうから、このくらいになっちゃうのかな。
収められている内容は下記のごとく。
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日米戦争はまさかないと思ふが(武者小路実篤)
飲まば焼酎・死なば卒中(古今亭志ん生)
生と死(小林秀雄)
阪神見聞録(谷崎潤一郎)
文芸雑談(芥川龍之介)
敗戦記(菊池寛)
校正の研究を読みて(露伴学人)
近頃の若い人は座談会(河盛好蔵ほか)
野球の時代は終わった(寺山修司)
さらば青春の新宿ゴールデン街(野坂昭如、田中小実昌、長部日出男)
出版界批判座談会
復興大東京座談会
明治文化座談会
東京ナイト・ライフ座談会
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このほかに、アフガニスタンより帰りて(北田正元)、
ぼくの撮影所日記(石原慎太郎)あたりが入っているのは、
今と接点が多そうなテーマや人で、読者を広げようってところかしら。
なんといっても面白かったのは、
小林秀雄、古今亭志ん生、
芥川龍之介、寺山修司のもの。
語り口を文頭の1節を読んだだけで、
「あ!○○さんの文だ!」と
瞬時にわかるほどの個性豊かな文体と濃さがあって、
なるほどぉーと、うなりました。
いまどきの雑誌のインタビューや文章の文体は、
ひとめ見ただけでは「○○さんの文書だ」とは判別がつきにくくなっていて、
際立ちにくいですよね。編集者やライターさんが均質化する傾向もあるだろうし。
昔の人が書く文章には、表紙や背表紙を見なくても、
作者がわかるくらいの人が香り立つ特長というか、
「自分の言葉」があったのだわーと、改めて感心しました。
くすっと笑ったのは、いつの時代もおんなじなんだけど、
「大学生がどんどん学力が低下している、智恵が足りない」と
いっている座談会で、
本当に80年前から、どんどん低下しているとしたら、それはそれは大変なことであります(^-^;
まあ、当時は大学進学率、現在の55%の10分の1以下で、
大学が大衆化する前の話なんだけど、
「いまどきの学生は、『純粋理性批判』を原典のドイツ語で読もうともせずに、いかんよ」
とかあって、読めない読めない、と苦笑(^-^;。
カントは日本語でも読みこなすのが大変な人が多いだろうに、
いわんやドイツ語じゃあ、専門でもないかぎり、手は出さないだろうなあ。
昔と今では「教養」の中身が違うようでありました。
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