はっきし言って、3年くらい前まで「やおい」とか「同人」とか、軽視してたですよ。
中高校生がネットでその手の発言してたり、
パクリイラストを描いて投稿してくると、
「オリジナルを描けよぉ〜」と思ったもんでした。
たいてい、同人系についての発言とかになると
「○○好き〜vvv」(注:「v」とはハートマークの意味です)
で終わってしまって、話が深まらないもんだし、
やおい系ともなれば、どんなに過激な内容の作品でも、
感情移入しようのない異性と異性のドッキングなわけで、
所詮、読者の女の子にとっては他人事なんですよね。
顔を手で覆いながら、指の隙間からこっそり見て楽しんでるよーなもんで、
つきつめていっても最後に逃げ道があるから、自分のこととして深まらない。
なので、話のネタとしてつまんない。
「王道は、やっぱ、すごい」
「パクリはオリジナルを離れて存在できないし、越えられない」
ってのは、いまだに思うことなんだけど、
とはいえ、下記のような作品が出てくると、同人ってのも面白いと思うわけです。
「LOVELESS」 高河ゆん 一賽舎
高河ゆんといえば、CLAMPなどと並び、同人では伝説的なマンガ家のひとり。
名前は知ってたけど、いままで読んだことなかったです。
これが、読むとすこぶる刺激的。
言葉、力、記憶、愛することと憎むことの違い、
自分探し、犯人探し、虐待、傷、殺人、
恋愛、友情、二重人格、ネットワーク、
やおい、ロリコン、ねこ耳・・・などなど、
通常のマンガに比べ、盛り込む要素が多すぎる。
けど、それが表層的なサンプリングやパッチワーク的に並べられてるのではなく、
見事にまとめあげていて、絶妙のバランスをとっているところがすごい。
大量販売や読者ニーズにがんじがらめの商業ベースのしばりから解き放たれた
「自由」ってのをうまくコントロールできてるところが、お見事です。
なんだかんだいって、制約の中で物を作った方が
まとめやすく&深めやすく&ハズレにくいところがあって、
「なんでもあり」に瞬間に、途方に暮れて作りにくいものなので、
「自由」の中でこんな表現できるのは、
本人の中でのOKラインのハードルが高くて、
ストイックな一面があるんだろうなーと思ったりして。
ストーリーは・・・って、紹介を書こうとして、
スッと書けないところが、やっかい(^-^;
着目するキャラと要素によって、何パターンも書けてしまうんですよ。
弥絵なら5パターンのあらすじは確実に書けるな。
それが全部、違う話になる。フツーそんなの、ありえないっ!
それがこの人のだれにもマネできないオリジナリティであり、
口コミに乗りにくいデメリットでもあり、
逆に、これが大ヒットしたら、
日本は変わったなあ、マンガ業界は変わったなあってことになると思う。
とりあえず、主人公の男の子に起きる出来事に着目したスダンダードバージョンの紹介をば。
主人公の立夏(りつか)は知能が極めて高く、大人びた気丈な少年。
唯一の理解者であり慕っていた兄が何者かに殺害され、孤独な毎日。
2年前になんらかの拍子に人格が入れ替わってしまった彼は
それ以前の記憶を一切なくしている。
「正解」のある学校の算数では満点をとるが、
母が求める「本当の立夏」に求められるものはわからず、
母に「ニセモノの立夏」と疎まれ虐待され、傷が絶えることがない。
精神科医に「今の自分でいることは悪いことではない」と言われ、
理解はするが、本人は「でも、罪だ」と思っている。
そんな立夏が大好きなのは、写真を撮ること。
今の自分がいつ消えてもおかしくない恐怖を緩和させるのは、
存在していた証となる写真(思い出)。
自分や友だちの写真を撮るときだけ子どもの顔になる。
そんなある日、兄の友人だった大学生の草灯(そうび)が会いに来た。
草灯は、立夏の兄に頼まれて立夏を守りに来たという。
そして、兄がとある組織に殺されたことを告げる。
犯人探しを始め、謎の組織との戦闘に巻き込まれた彼らは・・・
謎の組織との戦闘が、独特。
2人1組でチームを組むんだけど、
その関係がサクリファイス(犠牲)とサーベント(奉仕者)と呼ばれるわけ。
でもって、戦闘中はサーベント(奉仕者)が言葉による攻撃を行い、
受けたダメージはサクリファイス(犠牲)が全て請け負うことになってます。
言葉による戦闘ってのも独特で、セリフ回しが美しい♪
敵が「眠りのない夜の、暗黒を見ろ!」と、
言葉を放つと、闇に覆われてダメージを受けるわけ。 で、草灯が
「介入、干渉する。
暗闇を切り開き、広がる満天の星。輝く光の粒子。
たとえそこが暗闇であっても、
星々は確実に存在している」と言うと、闇が破られる。
(※第二巻 p77〜81より引用)
この言葉の合戦が見所のひとつですねえ。
魔術や呪術の言葉ではないんです。
相手の放った言葉に連鎖しながら、
より高次の言葉を連ねることがポイント。
言葉そのものに力があるわけで、いままでありそうで、ない方法だなあと感心。
ちなみに、戦闘に関わるものには、「本当の名前」がありまして、
立夏くんは「LOVELESS」です。
彼らの象徴的な名前も興味深いっす。
でもって、肝心なことをひとつ、言い忘れてましたが、
大人はフツーの耳ですが、
大人になってない(セックス体験がない)場合、
ねこ耳、ねこしっぽつきです(←萌え要素)。
「うわ、あいつ、耳がない」とか噂になったり、偽ねこ耳も出るあたり、青春だなあと
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