あまりここでは文句を書いたことはないんだけど、
絶賛され、期待していた分、がっかりしたので、その勢いでカキカキ。
博士の愛した数式 小川洋子 新潮社
記憶が80分しか持続しない天才数学者は、
通いの家政婦の「私」と阪神タイガースファンの10歳の息子に、
世界が驚きと喜びに満ちていることをたった1つの数式で示した…。
頻出する高度な数学的事実の引用が、
情緒あふれる物語のトーンを静かに引き締め整える。
著者最高傑作の呼び声高い1冊。
このコピーにすっかりだまされた(^-^; いや、だまされる方が悪いんだけどね、きぃ〜。
読み始めてすぐに、なんて女らしい
いやらしさにあふれた話なんだろう!と仰天。
それはそれで小説の1ジャンルとしてアリだけど、弥絵は苦手。
モチーフが好みだった分、がっかり(T-T)。
読む前は、記憶障害を持つ天才数学者ってのは、想像もつかないほど切なくて、哀しくて、
かつ、興味深いに違いないと思っていたら、
なんてことはない、80分しか記憶が持たなくさせることで、ただの人にしてしまったのでした。
天才数学者とくれば、凡人から想像もつかない思考回路と行動様式を持ち、
とにかく、考え続けて、あっちの世界にいっちゃうもんだと思うんだけど、
80分しか考えられないんだもん。あっちの世界に行き着かないじゃない。
しかもお世話が必要でしょ。
天才を記憶障害にさせることで、
自分にも理解できる、
手の届く範囲の男にしちゃってるんだから、
女の子に都合のいい少女小説っていうか、ロマンス小説とどこが違うんだろう?
「頻出する高度な数学的事実の引用」にもワクワクしてたんだけど、
ガモフの「宇宙=1、2、3…無限大」と
エンツェンスベルガー・ハンス・マグヌスの「数の悪魔」
に書かれている話ばっかで、
そこに具体的な事象(野球チームの背番号やスーパーにありそうな物)に置き換えられた計算や、
感情表現が入ってくる分、逆にわかりにくくなってたりして(^-^;
数学の面白さとは感情表現で表現できるものではなく、
察するに、宇宙の果てについて考える時のような空恐ろしさとワクワク感が同居する中で、
真理を発見する瞬間のような、哲学や宗教に近いもんじゃなかろうか(わからないんだけど)。
これなら、2年ほど前に読んだ
「ペトロス伯父とゴールドバッハの予想」
ドキアディス,アポストロス 早川書房の方が
「2より大きい全ての偶数は、2つの素数の和で表せる」を証明するために
一生を棒に振った異端の天才数学者を扱った小説として、よほどのこと面白い。
・・・ってか、似ている。天才数学者の雰囲気や登場する少年の雰囲気や役割がよく似てる。
違うのは、「ペトロス伯父〜」の方は、親戚の鼻つまみだった変人&天才の
伯父にあこがれて数学科に進んだ少年(筆者)が自分には才能がないと見切って、
映画監督になっていく話だけど(ちなみに筆者は15歳の時、コロンビア大学で数学を専攻。
後にパリの高等学院(EPHE)で数学を本格的に学んだ人)、
「博士の愛した数式」に出てくる少年は、がんばって中学校の数学の先生になってしまうのだ。
天才と凡人を同じ土俵で扱うのは不遜だと思う。
・・・と書いたら、すっきりしたぁ〜。
話変わるけど、この間、電車に乗っていたら、前に座っていたおじさんが、
パズルを解いてまして。
それが、9×9マスに1〜9の数字を入れていくパズルで、
3×3マスの周りに太枠がついていたから、察するに、
3×3の正方形に1〜9の数字を入れて、
タテ9マスにも1〜9が存在し、ヨコ9マスにも1〜9がだぶらずにバランスよく存在しないといけない
入れ子構造のパズルだったみたい。
弥絵は、パズルも知恵の輪もなぞなぞも苦手なので、
「こういうの真剣にやる人いるんだなあ」って、たまにちらりと見てたんだけど、
(自分の知らない面白さを知ってる人には、どこが面白いだろう?と追求しちゃう癖があるもんで)
10分の間、3つの数字を書き入れたくらいで、全然進まないの。
きっと難しいのだなあと思っていたら、15分くらいたった頃、
一瞬のうちに、がああああっと、全部のマスの数字がうまって、
「ははあ、パズルとはそういうものなのか」と感心したのでありました。
ま、パズルには正解があるからね。
数式は成立しえないこともあるんだけど。
初めまして。
書評,興味深く読ませていただきました。
絶賛されていたので書店で手に取ったところ,
どうも違和感を感じたので結局買わずに帰ったのですが,
読了していたら,多分,あなたと同じような感想を
持ったのではないかと思います。
あなたの視点,興味深く感じたので,
また,ゆっくり遊びに来させていただきます。
では。
投稿情報: lultimanevediprimavera | 2005-02-19 20:31