ららら科學の子 矢作俊彦 文藝春秋
矢作俊彦の小説は、「気分はもう戦争」という大友克洋がからんだのと、
「あ、じゃぱん」くらいしか読んでないんですが、
独特の熱さとクールさがあって、かなり好きです。
今は亡き景山民夫とか、弥絵よりも1世代上なら植草甚一とか、
かっこいいおじさんってこういう感じかな?って思ったりする。
で、久々の新刊。
表紙は鉄腕アトムの中国語版のコマを抜粋したもの。
中国語はタテ組だから、英語訳と違って、
マンガの流れが損なわれてなくてグッドだなあ、
なんて、どーでもいいことを思ったりもして。
話の内容は、帯によると、
「彼は還った。山に閉ざされた中国での30年から、未来世紀の東京へ。
ブルガリの金時計をした白ウサギに導かれるまま、
紅い帽子をかぶった50歳の少年は、
1968年の「今」と2000年の「未来」を2本の足で飛翔する。
覚醒のときがおとずれるのを信じて。
構想15年、連載から6年、ついに完成。待望の最新長編。」
だそうな。
学生時代に学生運動をやり、殺人容疑をかけられて、
紅衛兵と「連帯」しようとして中国にわたった50代のおじさんが、
30年ぶりに日本に密入国して帰ってきて、
行方不明の家族を探す話。
中国マフィアと日本のヤクザの抗争に巻き込まれたりする
冒険活劇もあるような・・・。
まだ、ちょっとしか読んでないけど、出だしからかなり切ない。
30年の間に、風変わりした都市の形や日本人の姿がうきぼりになってきて、
自分が浦島太郎になった気分になれちゃう。
長いこと住んでると、日常の中で変化していくものだから、
変わっていくことに気がつかなかったり、意識しなかったりするんだけど、
はっきりくっきり、30年前と今の違いを書けるって、
自分に確固たる不変のスタイルやポリシーがないとできないかも。
くすっと笑えるところも多くて、
本屋で埴谷雄高の白黒写真を見つけて、
「あの長い長い小説は完結したのか?」と思ったり、
「ジェイムス・ジョイス伝」を手にして、
定価8200円を見て、びびったり、
渋谷の道ばたに座ってる金髪・ピアス・刺青入りの男の子が、
東大教養学部の履修要綱を持っていることに首をかしげたり、
ケータイがわからなかったり、消費税に戸惑ったり・・・
まあ、とりあえず、タイムスリップを楽しむ気分で読んでみようと思います♪
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