「行く先は晴れやかに あるいは、
うろ覚えの詩が世界を救う」
ヴェンデラ・ヴィーダ 秦隆司訳 河出書房新社
まず、題名にやられました!
この手の長くて、語りかけるよーで、
なにかを予感させる題名は、大好き♪
でもって、この小説、すごく完成度が高いんですが、
デビュー作なんですねえ。びっくりです。
主人公は大学生の女の子。
公園にいたときに、突然、男に拳銃を頭に突きつけられ、
殺されそうになるところが物語の出だしです。
「もう生きてたくないから、一緒に死んでくれる人を探してた」
というのが、男の理由だから、手に負えません。
彼女は、こんなことであたしの人生が終わっていいのか〜?!
と思いつつ、なんとか生き延びる手段を考えるわけですが、
そこで考えついたのが、詩の暗誦!
笑える(^_^)
「世の中にはいいものもあるわっ!」
「生きていくために必要なものがあるわ」 と
死にたがって道連れを探している男に、
幼いころに母親に暗誦させられた詩を披露します。
するってーと、男は興味を持ったのか、死ぬのがばかばかしくなったのか
定かではありませんが、彼女を殺すのをやめて去るのでした。
ラッキー♪
上記のように、常に主人公は出会い頭の事件と
混乱に巻き込まれていくわけですが、
いつも、へんてこりんなユーモアで乗り越えてしまうのでありました。
この子、お笑いでもないし、
前向きでめっちゃ明るいばっかりってわけでもないんだけど、
なんかすっとんきょでいい味出してるんですよね。
このほどよいユーモア加減
(本人は真剣)なところがいいなあ〜と。
ところで、話変わりますが、彼女が暗誦した詩は
イエーツ、ウイリアム・キャロル・ウイリアムズ、
フィリップ・ラーキンなど。
この詩人たちの名前を見て、
若い! この詩を教えるお母さんが若い世代なんだ!とハッしました。
古典的な詩を子どもに教えるではなく、
20年、30年前は前衛的といわれていた上記の現代詩人
(イエーツは違うか)の人たちを
教養として教えるアメリカ家庭って、イメージしたことなかったです。
こういう小さなところで、時代の流れを感じるわ〜。
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