昨日に引き続き、ジェシー・ノーマンのオペラについて。
今日は舞台美術編。
舞台美術もすごけりゃ、照明も空前のすごさでした。
前半の「期待」の幕が開いたとき、
真っ暗な舞台に、5人の人影が見えたんです。
「あれ?ひとりオペラなのに、
ダンスでも横でやるのかしら?」と思いきや、
薄ぼんやりした光があたり、
闇の中にかすかな陰影が浮き出てきて、
よくよく見ると、
人と同じ大きさの土偶のような巨大彫像らしい。
ほーー。
ここまでは、なにせ演劇にもちょくちょく行くあたし、驚かない。
ここからですっ!
舞台全体がぼーっと真紅に染まったり、
そこから、湖の底のような複雑な色合いになったり、
照明によって、舞台そのものの大きさや質感、
空気の重さまで変わるがごとく。
異世界から何かが沸きいずるような美しさ。
物語の進行に合わせて、
20個くらいある彫刻の一部にのみ光が当たり
全身を映し出したり・・・と、
舞台の色合いと彫像への光の当て方で、
1つの舞台が無数の顔を持つんです。
中世のボッシェの地獄絵のようなときもあれば、
幻想的で、異様で、謎めいている現代美術のようなときもある。
突然、壁に光があたり、常人の3倍の長さもある、長〜い腕が2本、
壁から伸びているのを発見したときは、ぎょっとして、
へえ、さすがフランスともなれば、
こういう舞台美術でも、
個性的でミンモ・パラディーノとか
エンツォ・クッキを彷彿させる、
びっくりさせる作品を作るのね〜
やっぱり、血が違うんだわっ!
と思ったわけです。
そうしたら、正真正銘、全部、
パラディーノの作品でした!
イタリア現代美術の重鎮、ミンモ・パラディーノの彫刻が
20点近く?! しかも、ぜんぶ、でかい!
こんなにたくさん集まったのは、美術館でも観たことない!
たった36分の舞台のために作られたもの。
なんじゃ〜!!そりゃっ!!
それはすごすぎるぅ〜!
いや、これが本来の鑑賞の仕方かもしんない。
とかいいつつ、頭の中で1体おいくら〜
全部でおいくら〜・・・と
そろばんをはじき出し、ハッと我に返って、
なんて自分は小市民なんだっ!とがっくし。
こんな贅沢なことができるなんて、信じられない!
神の声と、空前の照明と、強烈な彫刻、
ひとつでもすごいのに、
3つが超ハイレベルで完璧な融合を遂げていて、
こら、えらいものを観てしまったっ!
と、ドキドキしてしまいました。
総合芸術とはこのことかぁ〜。
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