ジェニーの肖像
ロバート・ネイサン 山室 静訳
子どもの頃読んで、タイトルもストーリーもすっかり忘れて、
「あれはなんて本だっけか?」と、
ふと、年に3回くらい思い出していた本をbk1はてなで教えてもらいましたっ!
さっそくゲットして読破。
いや、断片的に覚えていたストーリーと、
さっぱりもって違っていたもんで、びっくり。
自分の予想していたよりも、断然、ずっと、深くて面白かったです(^O^)
主人公は貧乏で食うや食わずでへたっている青年画家。
世界の生彩がなくなり、スランプに陥り、絶望しているときに、
公園でひとり遊んでいる幼稚園生くらいの歳の女の子に出会います。
古風な服を着たおしゃまな彼女は、昔の話を今のことのように語り、そして、
不思議な歌を歌いながらどこかに消えてしまいます。
彼は彼女のスケッチを描くのですが、これが画廊で絶賛。
家賃代としばらく食いしのげるお金になります。
次に少女に出会ったのは、約1ヶ月後。
少女はずいぶん大きくなっていて、
学校に通ってフランス語を習っている話をします。
出会いを重ねるたびに、少女は美しい大人の女性へと成長していきます。
「待っていてね、私、急いで大きくなるから。」
少女が彼と同い年くらいになったとき、物語はクライマックスを向かえ・・・。
ってな感じで、時を越えた恋&ロマンチックなSFファンタジーなのですが、
幻想的で詩的な文章と、
深い哲学的な問いの数々があり、
今、読むと、すごく示唆と刺激に溢れてて、
これはすごい本だったのだ!と感嘆。
子どもにはこの本は読みこなせないっ!
ぼんやりとしか覚えてなかったのは当然だったのだ!と納得。
「芸術家にとっては、ただ生きていくというだけでは十分でなくなる。
絵を描き、そして食うものを十分にというだけでは、
遅かれ早かれ、神はその問いを投げつけるのだ。
<おまえはわたしの側に立つのか、それとも敵の側に立つのか>と。
そこで芸術家は、それにたいしてなにか答えなければならない。」
「芸術は、それを創造する芸術家にとってのみ、意義を持ちうるのだ」
なんて、そんじょそこらのSFファンタジーでは出てこない内容です。
ドラマチックな2人の不可思議で、運命的な悲恋に感動しつつ、
芸術とはなにか?芸術家とはなにか?生きるとは?人間とは?
・・・などなど、じーっと考えてしまう名作でありました。
ちなみに訳はムーミン、グリム童話、アンデルセン童話などでおなじみの
大御所、山室静さん。
山室さんはドイツ語の本をメインに訳されていて、
アメリカのこの話を依頼されたときには、門外漢だからと断ろうとしたそうです。
が、読んでみて、即OKしたってな話。
たしかに、アメリカ文学というよりは、ヨーロッパ的かもしんない。
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