ラジオの学校〜生きるためのことば
河内紀 筑摩書房
友達に薦められて読んだ本。
読み出したら止まらなくなって、普段は<読破型>の弥絵も
付箋を片手に琴線に触れたところに張りまくりました!
すっごく刺激的で面白かった!!
作者の河内さんは60年代からラジオやテレビで
ドキュメンタリーの製作をされてきた方。
60年代といえば、テレビもまだ普及に加速がついたばかりで、
一般の人から見れば、「わけがわかんないヤクザな仕事」だったワケで、
それが80年代には「マスコミってかっこいい〜(^O^)」になるんだから、
たった20年で大きく変わった業界といえます。
その業界で50年近く製作している重鎮、河内さんは、
この本の中で、番組作りを通して考えてきた
「音とことば」の世界の深さを、具体的な事例とともに語ってます。
●ひとは単純に「わかる」だけではない、もっとたくさんの意味を伝えるために
ことばをしゃべってきたのではなかったか。
●自分のことばを持たなければ相手に伝わらないことを。
沈黙もまたことばだということを。
ひとにはそれを聞き取る力がそなわっているのだということを。
●口ごもる「間」をカットするナカレ。
矛盾した言葉を整理するナカレ。
まわりくどい言い回しをわかりやすくするナカレ。
などなどの、はっとさせられる言葉とともに、
昔の職人芸とも、遊びともいえる、
超人的な技や、情熱や、作品のテーマを
手のうちを明かすように、具体的に教えてくれます。
オイシイ本だっ!!!
ところで、最近の「わかりやすくしすぎる」放送に苦言もしてまして。
執拗に繰り返される過剰な説明、
字幕テロップ、笑い声や拍手の挿入による行動の誘導、
過剰なバックミュージック、効果音・・・などなど。
●作り手はそれを受け手に対するサービスだと考えているが、
この手法は政治的なプロパガンダやアジテーションの手法とまったく同じものだ。
受け手を、ねらいどおりに反応してくれるように操作しようとする作り手の願望も。
小学生や中学生と話していると、
思ってはいても言葉にできないもどかしさや、
それによる不機嫌〜ってなのに出くわすことがままあるんですが、
これは概念が発達過程にあって、語彙がついていってないからなんす。
知識を増やしたり、いろんな場面に遭遇しながら、
葛藤やら試行錯誤を繰り返して、
自分の言葉を獲得していくわけですが、
大人になっても会話が大味な小学生レベルって人も増えてる気がする・・・。
おっと、話ずれました。
中でも興味をひかれたのが、
ことばとジャズとお笑いの結びつきです。
●当時つきあったジャズ・プレイヤー、マネージャー、プロモーターなど、
ジャズの関係者の大半が、マンガや落語の愛好者であったこと。
それもマンガならぱ、ストーリー・マンガよりもギャグ・マンガ、
落語ならば円生ではなく志ん生。
志ん生の落語にアドリプ部分が多かったこととも関係があるかもしれない。
ジャズの「ブロウ(吹く)」と、マンガの「フキダシ」、
そして思わず「吹き出して」しまう笑い。
そのなかには共通する筋肉の動きがあり、
反復を繰り返す震えるような筋肉の動きの記憶が
それぞれを理屈ヌキで結び合わせるのではないか。――冗談からコマ!
「呼びかけと応え(コール・アンド・レスポンス)」についてのくだりで、
ひとつのことば(音)が、飛躍に飛躍を重ね、
爆発力を持つにいたるって話なんですが、
原点の勉強法を教わりました。
・・・って、こんなに引用していいのか?っていう今日の日記ですが、
この本、表現に興味のある方は、ぜひ、ぜひ、ご一読ください。
ものすごく、刺激的で、後々生きてくる骨を一本、
からだにもらった気持ちになれる本でした(^-^)
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