会社が移転したら大きな本屋のそばになりました。ここんとこ、物欲がぽっとり落ちてしまって調子が出ないなー、そろそろ侘び寂び枯れの境地かなーと思っていたのですが、まったくの錯覚でした。本屋に足を踏み入れたとたん、ルンルン♪ ウキウキ♪ 大きな本屋に日々通えるような環境は約1年ぶりなんですが、アマゾンでは得られない楽しさが~♪
というわけで、今日は久々に本&マンガを大量にゲット。そのうちの1冊を読みました。
「ひかりのまち」浅野いにお
浅野いにおさんのマンガは初めて読みます。舞台は郊外の団地、通称ひかりのまち。この街に住む住人が主人公となってオムニバス形式で物語が進みます。メインの短編の主人公は小学生の男の子。母は死去。父は引きこもりの元刑事。中学生の女の子と一緒に学校に行かずに、女の子を暴行した犯人を捜す毎日。そして、男の子のウラの顔は「見届け屋」。自殺サイトの常連で死ぬ決意をした人々にケータイでコンタクトを取り、最後の肩押しをする・・・
うわ、書いてみるとむっちゃ暗い設定だわっ。この暗さがマンガから感じられないのは、現実感のない淡々とした空気が漂っているから。泣き叫ぶこともせず、絶望もせず、ただ日々を成り行きで過ごす人々。楽天家の弥絵は、この手の本を読むと「どうしたらいいんだろう?」と途方に暮れます。せめて絶望できればいいのになあ。自分は絶望なんてしたことないから、ほんとのところどうだかわからないけど、本や映画を観てると、絶望すると反動で怒りだとかその他行動に出てるじゃない? それさえないのが現実感がない世界で生きていてつらそー。
ところで、団地をベースにしたマンガといえば、大友克洋の「童夢」。そして、淡々としたなにも起きない日常への不安や、大人になることへの拒絶といえば、岡崎京子。この2人の空気に近い気もしたけど、それらよりも、もっと希薄。社会性がない・・・というか、「社会」がない。主人公が生まれたときから社会がない感じ。ともかく、うっすらとした膜が視界に広がる奇妙さがあるマンガでした。この独特な感じがこの人の特徴だろうし、他にないからいいと思うんだけど、自分はやっぱ、読後感が明るい勇気の出るマンガが好きっす。
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