先週末、京都まで行ったのは、南座で玉三郎さんが中国の麗人のお姿で舞われるのをひとめ見たい!と思ったからでした。
京都の南座は四条のど真ん中にあります。東京の歌舞伎座よりも少し小さいのですが、細やかな透かしや文様に凝った調度が多く、建物全体のもう少しでバランスを崩しそうな和洋折衷のあやうい豪奢さが興味深いです。売店とかそういうのは東京の方がテーマパークみたいで楽しいなあ。
とにかく、今回の目玉は、玉さまの美しさですよ!中国・昆劇は世界文化遺産に登録されている古くからある伝統芸能なんだそうですが、玉さまの存在感の大きいこと!美しさも演技も踊りも圧倒的にすさまじかったです。最初の演目の「牡丹亭」の主人公役は玉さま含めて3人の演者によって演じられたのですが、中国の女形の方は、同じ衣装を着ていても別人。どうしても男に見えるのです。立ち方、手の動かし方、首のかしげ方・・・細かい部分の動きで男女の差がこれほど現れるとは! 日本の歌舞伎の技術はすごい、としみじみしました。
最初の演目「牡丹亭」は、日本の牡丹燈篭にも影響を与えたという物語で、夢の中に出会った男性に恋焦がれて死んでいく少女のお話。息絶えるときのはかなさと、恋焦がれる男性への執念みたいなのが入り混じって、不思議な気迫がありました。
2つめの演目は、玉三郎さんが日本はひとりで踊られるという「楊貴妃」。今回は劇になっていて、楊貴妃としての立ち振る舞いが見られたのがよかったです。絶世の美女を演じてだれよりもさまになるなんて、すごいなあ~と。
残念だったのは、来日公演ということで、舞台美術の豪華さがいつもの歌舞伎に比べて質素だったことと(大道具なって海を越えて運べないもんね)、アンコールがこれでもかってくらい長かったこと。
あと、なるほど、と思ったのは、玉さま以外の中国語はテンポが早く音程が高いため、悲劇でもアクションか喜劇に聞こえるという言葉の違い。そして、心のひだを描くような心理描写がなく、けっこうあっけらかんとしていて、なんとなくハリウッド的だったということでしょうか。香港映画のスターがハリウッドに行って成功するのは、文化がどこか似ているからかもしれない、と思ったりしました。中国の古典とか読んでると、情や恥じらいや恨みなど、言葉にならないような水面下の感情表現が豊かなような気がするけど、その辺は日本の方が表現するほうも、くみとる方も発達しているかもしれません。
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