正月休みに横浜・鎌倉へ母と一泊旅行。ホテルでひまひましてたので、iPhoneアプリで遊んでました。
「歪みの国のアリス」。女子高生の間で大ヒットしたというホラー・アドベンチャー。ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」をモチーフにしたゲームは、「アリス・イン・ナイトメア」(これはグロイ)、「ハートの国のアリス」(これは恋愛もの)とか、いままでもいろいろありました。原作がすばらしくおもしろいので、その要素がちょっぴりでも入っていれば、まあ、おもしろいでしょうとも‥‥このゲームは、ゲームっていっても、選択式でエンディングが変わる小説みたいな感じで、4時間くらいで、10パターンくらいあるエンディングを、ぜんぷやりきってしまいました。
「歪みの国のアリス」は女子高生がシュールな世界に迷い込んで、真実を握るシロウサギを探し求めて冒険するというお話。アリスは、なにせ女の子だから、甘くてやわらかくておいしいので、不思議の国では囚われて切断され、ほんとに食べられそうになることもしばしあり。たしかにホラーだわ。
序章は退屈だったけど、前半のパン屋騒動のくだりだけは秀逸でした。パン屋騒動は、人間そっくりのパンでできている人たちが登場する章で、つぶあんのあんぱんとこしあんのあんぱんが戦争してたり、紅顔で色白の少年たちが牢屋のなかにぎっしり立っていて、「僕を食べて!僕を食べて!」と叫んでたりします。わははっ。
アリスはこのパンの人を食べなきゃいけないはめに陥るわけですが、「食べられないよぉ」と拒否すると、切々と、食べられることがパンの本分であり、食べられないとカビてしまってパンとして生まれてきた意味がない。だから、僕を食べてと、ながながと説得されて迫られるわけで‥‥。ここはよくできている。
この話はギャグっけもあるけど、いちおホラーなので、血みどろの幽霊におっかけられるとか、惨殺されてジ・エンドとか、反撃して殺しちゃってジ・エンドとか、さまざまないやな要素が織り込まれてました。そして、私は、カニバリズムのこのくだりが一番「ムリ」と思いました。自分がホラーでどういう状況になるとイヤかが、よくわかった。共食いはムリだ。
ところで、この話、エンディングが近づくと現実と不思議の国の折り合いがつかなくなって、ぐだぐだになってしまいました。ずっとパン屋騒動のノリでいってくれれば傑作だったのに。
ぐだぐだになった原因は、たぶん、シナリオを書いている人が、ごくふつうの感覚を持つ、いい人だったと思うのです。登場人物に共感しようとした結果、自分の想像がつかない環境や異常さを考えるときに、ついていけなかった感じがする。異常な登場人物を書くときに、書く人が異常である必要はないと思うのですが。
さて、どこが女子高生にウケたのか? エンディングでわかることですが、アリスは母親にずっと虐待されて育ってきて、逃げ場が自分の想像の国だったと。そして、母親に殺されそうになったときに、そこまで愛されていない私はかわいそう、そんな自分を見るのはいやだ、親に殺されるくらいならその前に死んでやる‥‥と自殺未遂をして、夢の国に入るというところからスタートしていたわけですね。この「かわいそうな私」が涙をさそっているとしたら、とほほです。高校生にもなっていたら、命については、親から自立してなきゃね。生命の危機を感じたら「全力で、とにかく逃げろ!」であります。逃げてよいのです。
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