「ダンス・ダンス・ダンス」
村上春樹・講談社
この本、発売されたときに、
ハードカバーで買って、途中まで読んで、
なんかよくわかんないやぁーって、人にあげちゃたのよね。
で、改めて読み直してみたら、面白かった。
主人公の「僕」が始終、 内省的にうだうだしてるもんで、、
それを当時は受けつけられない精神状態だった
のかもしれないし、
ちょこっと歳食って、うだうだ君でも、ま、いっかーと
思えるようになってるのが、面白がれた理由かも。
ストーリーは、
妻に離婚され、彼女も突然去っていってしまった「僕」が、
喪失感と孤独感を抱えたまま、
若かりし頃、当時つきあっていた彼女といった
北海道の「いるかホテル」に行く気になったところから始まるのだ。
好きだった女の子が、そのホテルの中で、
泣いている夢をみたのがきっかけ。
行ってみると、元のうらぶれた博物館のような
ホテルはなく、超立派なホテルが建っている。
でも、ある日、ひょんなことから、
ホテルの一部が、別の冷たくて真っ暗な世界に
つながっていることを発見し、 羊男と出会い、
「ここもきみの世界だ」といわれるのだ。
ここから、物語が本格的にスタート。
同級生の超ハンサム・現在俳優、
霊感が強い完璧な美少女、
その少女の母の美人の天才写真家、
その愛人の片腕のアメリカ人の詩人、
少女の父の凡庸だけど人気作家など
魅力溢れる登場人物が次々と出てきて、
殺人事件が起き、「僕」は事件に巻き込まれていく・・・。
夢とインスピレーションと異世界、そして「僕」。
自分を中心としたいくつかの世界と、
いくつかの人間関係と、
いくつかの生死が入り混じって、
ごちゃごちゃになる・・・けど、
いつも、ひとりぼっちって話。
ところで、この小説、登場人物の何人かが
死んでしまうのね。
で、取り残されてしまった人たちが、
その「死」に対して、葛藤したり、無気力になったり、
はげまされたりといろいろあるのだ。
ここに目がいってしまいました。
恥ずかしながら、けっこういい大人になっているのに、
弥絵は、人の死とか、近しい人がなくなってしまった友人に、
どういう対応をしていいか、ほんとうにわからなくて、
いつも、不器用に、途方にくれて、言葉も出ないんです。
これでは双方でいたたまれないに違いない。
逆に相手に気をつかわせてしまうハメになる。いかん。
もしかしたら、こういう途方に暮れる人が実は多くて、
だからこそ、葬式やら、お悔やみやらの
儀式がある。
でもって、その「型」をこなしていれば、
へんでもなく、でくのぼうでもなく、
それなりにおさまりがつくのかもしれない
・・・とも思うけど、 でも、その「型」にはまるのも、
どうしたもんかいなあ、なんか違うなあと思うんです。
この本を読んだからといって、その答えはないのだけど、
「その人が死んだ後で、その人に対して
あのときは悪いことをした、と後悔する資格はきみにはない。
後悔するくらいなら、生前から公平に対応すべきだったんだ。
そんな簡単な後悔で終わりにするのは失礼だ。」
てな、ニュアンスのことを「僕」が少女に言っていて、
なるほどな、と思ったりしてました。
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