「パリ左岸のピアノ工房」
T・E・カーハート 村松潔訳
新潮社
この本、実話なんです。
パリに住むアメリカ人が近所にピアノ工房を見つけるの。
秘密結社のように人を寄せ付けないその店には、
何百台もの古今東西のピアノがあって、工房の職人は、
魔法のような技で古いピアノの再生
を行っているのでありました。
教会の鐘の音に似たベートーベン時代のピアノから
王宮で使われていたような豪華な装飾をほどかされているもの、
小さな家庭で何代も大切にされていたもの、
スタンウェイ、プレイエル、ファツィオーリ、ベーゼントファー、
ベヒシュタイン、エラール・・・
ピアノの歴史、構造、1台1台が持つ個性などなどが
とっても魅力的に描かれていて、
ど素人の弥絵にもよくわかりやした。
なによりステキなのは、
ピアノを弾くことの楽しさ、素晴らしさを
この本は言葉で表現してくれていること。
ピアノを弾くのをすっかり忘れて大人になった著者が、
この店に出会ったことで、もう一度ピアノを弾く決意をし、
自分にぴったりの音(ピアノ)に出会い、先生について習い出すんだけど、
そのときの条件は、「自分を表現する」こと。
うまく弾けるとかそういうんじゃなくて、
自分とピアノのある生活を楽しみ、
いつかは自分の音が出せればよいなあって思ってるのでした。
ははぁー、ピアノってのは、
本当に技術が必要なんだってしみじみしたのは、
「ピアノはそれぞれの鍵盤から出る音が決まった楽器だから、
河の流れのように弾ける技術がないと、メロディーにならない」
って書いてあったこと。
<流れるように滑らかに>
<楽譜を解釈して気持ちを>
表現できるようになるには、めっちゃ技術が大事みたい。
この本を読んでいると、広い家にひっこして、
筆者のように、自分にぴったり合った
個性を持つピアノと一緒に暮らしてみたいと
切望してしまうのでありました(^-^;
あかん、めっちゃ、贅沢な気分にしてくれる本なんす。
自分にぴったり合った掘り出し物のピアノがある生活なんて、
贅沢すぎて、破産しそう(^-^;
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