ゲド戦記Ⅴ アースシーの風
アーシュラ・K・ル=グウィン 清水真砂子 訳
岩波書店
足掛け35年の月日を経て、
ここに完結か?!
「ゲド戦記」の最新刊で、かつ、
正真正銘の?最終巻が出ました!
10年前に出た前作の「帰還」も「これが最終巻!」
と言われていたので、まだまだ続くかも。
一巻目「影との戦い」は1968年出版。
キング牧師の暗殺のあった年に出版されたこの本の
ヒーローであるゲドは、 黒い肌の少年です。
小学生の頃、読んだときには気がつかなかったけど、
物語の勇者といえば白人と決まっていた伝統や価値観に
一撃を与える内容だったんすねえ。
ちなみに、ル=グウィンは、アメリカ出身の女性。
(女の人だったとは、ずっと知りませんでした(^-^;)
両親共に、人類学者の家庭に育ち、
日本ではファンタジー作家というよりも、
SF作家として有名かも。
弥絵はファンタジーが大好き(^-^)
そのきっかけが小学校の頃に読み始めたこのシリーズ。
その後、トールキン(指輪物語)、
ミヒャエル・エンデ(はてしない物語)、
C・S・ルイス(ナルニア国物語)などなどに広がっていきました。
#とはいえ「ハリ−・ポッタ−」はまだ読んでません。
ことばは沈黙に
光は闇に
生は死の中にこそあるものなれ
飛翔せるタカの
虚空にこそ輝ける如くに
「エアの創造」
巻頭に出てくる一節です。
すごいファンタジーは、恐ろしく綿密に
世界観の構築が作られていて、
ゲド戦記には舞台となる世界の地図はもちろんのこと、
独自の歴史、文化、貨幣、人種、
んでもって創世記みたいなものまであるんです。
魔術師見習いの少年ゲドは、才能に満ち溢れすぎていたがゆえに、
高慢になり、周囲の魔術師から学ぶことなんざないっ!と、
自分で勉強を始めます。
そして、ある日、禁じられていた呪文を唱えて
「死の影」をこの世に呼び出してしまい、
影に追いかけられることになります。
影におびえ、逃げ惑うゲドに、ゲドの師は、
「人は自分の行きつくところをできるものなら知りたいと思う。
だが、一度は振り返り、向きなおって、
源までさかのぼり、
そこを自分の中にとりこまなくては、
人は自分の行きつくところを知ることは
できんのじゃ。」
と諭し、ゲドは「影」から逃げるのではなく、
自分から「影」を追跡し、立ち向かいます。
影との最後の戦いで、ゲドは、影の真の姿を見ます。
それは自分自身だった・・・・って話なんですが、
ゲドと影は最終的に一体化することで、「全きもの」になるわけです。
この物語を読んで、
光と影、善と悪、ことばと沈黙、生と死は、
二項対立するものではなく、
一緒になって完成するのだ
ってのを知った、小学生の頃の衝撃は
今でも忘れられません。
っていうか、それから変わってないです(^-^;
非常に面白い本なので、まだ読んでない方はぜひ!
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