「α(アルファ)」くらもちふさこ 集英社
「くらもちふさこ7年ぶりの新作」と帯にあり。
そっかー、くらもちふさこって7年もマンガを描いてなかったのか・・・。
7年といえばけっこうな年月で、
中高生はこの人のマンガを知らないってことね。
もったいないっ!!
くらもちふさこのご紹介をカンタンに〜。
「わずか一章節のラララ」「糸のきらめき」
などなど、名作をばんばん出して、
80年代の少女マンガの絶頂期を支えたマンガ家
のひとり。大御所っす。
彼女出現以前の少女マンガに出てくる男の子といえば、
長身で、やさしく、かしこく、スポーツマンで、
女の子を包み込んでくれるような子ばっかりだったんだけど、
彼女が、感情表現が素直じゃない
「いじわるな男の子」を
初めてマンガに出現させたときから、
少女マンガ全体がいっきに変わったのでした。
んでもって、オーソドックスな
単純なハッピーエンドにはならないんだなー、
ラストが。
読んでいると、葛藤したり、
胸をぎゅっとつかまれるような気がしたり、
泣けちゃったり・・・その心理描写と心情表現は、
すごいものがあります。
と、いうわけで、久々の新作。イッキに読んで、
がつんっと頭を殴られるような衝撃を受けました。
さすが、天才くらもちふさこ!
BUT、残念ながら、
このすごいマンガはメガヒットにはならない。
今の少女マンガの読者層のメインは、
もっとカンタンなラブストーリーや
派手でわかりやすいエピソードを求めているから、たぶん、読みこなせないと思う。
「α」は、男女4人の役者が主役。
新進気鋭の監督が撮った6本の短編映像作品の間に、
舞台裏の4人の男女の人間模様を挟み込み、
綴ったオムニバスの実験的展開。
まず、6本の映像作品のシナリオがすごいっ!
ファンタジーSF、ホラー、学園ラブストーリーなどなど
多岐に渡るジャンル。
本職のシナリオライター、映画監督、真っ青の出来栄え。
最近はシナリオ代が安く上がるせいか、
マンガのテレビ番組化が多いのだけど、
「マンガには映像が超えられない
表現力の凄さがある」ってことを
身をもって証明したような
恐ろしいほどの完成度になっております。
弥絵が一番好きな短編は、ホラーもの(α#3)
←上巻に収録されてます。
鈴木清順監督の「チゴイネルワイゼン」をも超える
「狂い」の感じが出ててすごくいい。
ひさびさに、総毛立つほどぞくぞくしました。
好きな幼馴染の男の子きいちゃんのいる田舎に、
久しぶりに帰る主人公。
彼女は数年前の夏休みに川に落ち、
きいちゃんのお姉さんが命に代えて救ってくれた。
以後、死への恐怖と、きいちゃんのお姉さんを
殺してしまったという申し訳なさで、
田舎に足を踏み入れることがなかった。
田舎が近づくにつれ、昔を回想する主人公。
きいちゃんのお姉さんは、記憶障害で言動が
一致せず、幼い頃から苦手だった・・・
ふと、車窓を見ると、お姉さんがびしょぬれで
立っているのを見つけて、 恐怖に震える。
お姉さんはきいちゃんのことが大好きだったから、私の存在は邪魔に違いない。
きいちゃんと葬式の場で会っても言葉は弾まず・・・。
人であるようで、人でないような存在の表情
(特に<まなざし>)って、
すんごく怖くて、同時に、惹かれる
ものだわ〜と、しみじみ。
ぜひ、映像関係の人や、マンガ好きな人に
読んでもらいたいマンガっす。
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