本朝聊斎志異 小林恭二
読んで爆笑!傑作ですっ♪
弥絵は本を読み飛ばす方なんですが、
もったいなくて1文字も読み飛ばすまい・・・と思えるほど。
本家本元の中国の「聊斎志異」が好きな人には、
元ネタから飛躍しすぎていて、鼻白むこともあるかもしれないけど、
弥絵としては、本家本元の「聊斎志異」よりも面白いっ!花丸!!
無論、元ネタの「聊斎志異」も面白いです。
「聊斎志異」は中国の昔の伝奇を集めた短編集で、
狐や犬などの動物や植物が意志を持ち、
仙人や幽霊や妖怪が当たり前のように存在する時代の話です。
日本の伝奇物は、かなり影響を受けていたりするので、
「あ〜!読んだことあるかも」って思うことあると思います。
※芥川龍之介、上田秋成、京極夏彦、諸星大二郎、今市子あたりが好きな方オススメっす。
本家本元の「聊斎志異」は文体も内容も誇張がなく、
淡々と簡潔に書かれているため、
逆に「こんなありえないことが、当たり前に語られるなんて!」と
びっくりするんですが、
どちらかといえば、「民話の記録」であり、
道徳的な面も強いので、決してエンターテインメントぎらぎら★じゃないんです。
が、小林恭二の「本朝聊斎志異」は、元ネタのプロットを
99%水増ししてふくらませ、舞台を日本にしてるし、
時代も昭和、江戸、平安とか、いろいろ。
柴田勝家が死んだのは、カミキリムシの呪いだとか、
んなアホなってことも多いですが、それで いいんです。
小説とは架空の世界を描くのだから。
まったく、久方ぶりに見た小説らしい小説っす。
元ネタからの跳躍のさせ方は、元ネタがなんであるかさえわからないほどで、
例えば、第二話「にお姫」ってのは、琵琶湖で助けた主(鯉)に、
後に恩返しされ、主(鯉)の娘を嫁にもらうって話なんですが、
本家本元は、琵琶湖じゃなくて西湖。鯉じゃなくて「すっぽん」です。
ただ一言「西湖の主であるすっぽん」と記されるのと、
「鯉は燃え立つような緋色に包まれており、
まるでひとつの炎が仮に魚の形をとったようだった。
鱗も磨きこまれた鋼の鏡のような輝きを放っていた。
しかし、何よりも感銘を与えたのは鯉の風貌だった。
これが本当に魚類かと思わせるほどの高貴かつ優美な顔だった」
と記されるのでは、 その気になり度がずいぶん違います。
「すっぽん」は嫁にもらいたくないけど、
「鯉に化けた美貌の人間を超えたなにがし」
なら、その気になるってなもんです。
艶やかで、ウイットに富み、人情話がベースにある・・・
あたかも、山本周五郎がハメをはずして
色恋に傾倒する小説を書くと
こうなるのかもしれない・・・と思わせる読後感でした。
初めまして。「聊斎志異」で検索したらこちらにたどり着きました。
蒲松齢作の本家「聊斎志異」は以前から図書館に行っては読んだりしていましたが、日本を舞台とした本朝聊斎志異は初めて知りました。
本家本元では下巻「鏡の中の女(鳳仙)」と「賢妻と狐妻(張鴻漸)」が気に入ったのですが、本朝バージョンはどうなっているのか…興味が沸いて来ますね^^。
小林氏の本朝バージョン、近いうちに読んでみたいものです。
では…。
投稿情報: 秋葉長月♪ | 2005-08-31 00:46