「ゲド戦記」流行ってくれて、ありがとう! おかげでル=グウィンの新刊がお目見え♪ なんと、「ゲド戦記」以来、38年ぶりの新シリーズです。38年ぶりってすごいよ。
「ギフト~西のはての年代記1」
ギフトといっても幸せなプレゼントの話じゃありません。「何かを得るためには、何かを犠牲に差し出さなければならない」というギフトの交換のルールが最重要視される世界のお話。
主人公はオレックという名の盲目の少年。彼の住む地域に住む人々は、ひとりがひとつだけ、天からさずかった特殊能力(ギフト)を持って生まれます。特殊能力(ギフト)は父から息子へ、母から娘へ、「血」によって受け継がれていきます。例えば、すべてのものを生まれる前にもどす力(=破壊・死・再生)、人の意志を奪いコントロールする力、生き物を呼び出す力(狩りに役立ちもするし、仲良しにもなれる)など。どれもこれも、物騒な力ばかり。オレックは一族の中でも際立つあまりに強すぎた力を持って生まれ、力を制御するために目をつぶしていました。
命や人を支配できる力を持っていたら、ほんとはみんな使いたいのです。血によって受け継がれてきた力を誇りに思い、親から子に伝授したり、懸命に訓練します。でも、鍛えても使っちゃうと殺し合いになっちゃいますから、安易に使うわけにはいかない。そんなわけで、過ぎた力は重荷でもあります。でもって、上記のルールです。力を使ったら、その分の代償を差し出さないといけない。だれかを殺したら、代償に身内の誰かを殺さないといけない・・・このルールで平和が保たれているのでした。
人の命を左右する過ぎた力を持った人たちが集団化したらどうなるか? けん制しあう毎日で、かなりの気苦労です。重苦しくてブルーな世界です。で、そんな世界だからこそ、少年が見つける日々の小さな喜びや、なにかをいとおしいと思う気持ち、幸せってなんだっけーみたいなことが、きわだっているのでした。この先を読むのが楽しみだ!
ところで、物語は少年の淡々とした独白による回想で進みます。この淡々とした語りがいいんです! 突然、魔法が派手に発動したり、魔法でハッピーエンドになるような表面的な話じゃないから、「これぞファンタジー! さすが、ル=グウィン!」と久々にドキドキしながら読んでます。
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