台北で行われたゲームショウで、ガンダムの監督・富野由悠季さんの講演会があったそうで、その全文が紹介されてました。最近、ガンダムづいている私、つい読んじゃいました。前半はピンッとくることが少なかったのですが(カリスマの御大に対して失礼な物言いをお許しください<ガンダムファンの方)、中盤以降、なるほど!と思ったところがあったので、忘れなメモ的に抜粋して引用しときます。小見出しと()内は私の補足です。
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■【表現するということ】
作品を発表する、表現するということの根本的な意味は、100万人に伝わる言葉遣い、100万人に伝わる表現方法を、スキルでもってアピールしないかぎり、絶対に伝わらないということです。
■【いまのデジタルツールは40年前の僕にとってはロボット】
(鉄腕アトムからアニメに携わっていた)僕の場合、現在のYouTubeやインターネット(デジタルツール)に当たるのが、ロボットものというジャンルでした。そして、ロボットものの漫画の上に、少しはこういう風な物語性、人間性があってよいのではないかと思うものを付け加えたのです。
みなさん方はデジタルコンテンツという、たいへん妙な言葉遣いから始まる世界に暮らしているわけですから、このツールを利用してください。ゲーム的なもの、YouTube的なもの、インターネット的なもの、デジタル的なものを利用してください(※富野さんはロボット嫌いで有名)。
■【我々は動物】
(とはいえ、)我々は動物なんです。デジタルなものに、感覚から映像からすべてのもので屈服するのが、我々人間なのかと問うたときに、それは絶対に嘘なんで、(メッセージやコンセプトにおいては)デジタル的なものはいっさい拒否していただきたい。そういう根本的な思いがあります。コンピュータ技術が基本的に一神教の文化から発したものだとすれば、そこには善悪しかないのです(一神教の文化では次の100年に対応できない)。
■【いかに生き延びねばならないかというコンセプトが一番大事】
これからの100年は爛熟の時代ではなくて、地球上で人類がいかに生き延びねばならないかというコンセプトを、一番大事にしなければいけない時期なので、極めてリアリスティックな物語というものが要求されていると思います。
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発言がけんか腰でエキサイティングでした。そういえば、「大人になったらアニメを見るな」と言ってたなあ(耳がいたい)。ガンダムの監督さんですが、ロボット嫌いと公言してはばからないし、けしてオタクな方ではないです(と言っていいのだろうか?)。
ちなみに、富野さんはうちの父と同い年、戦中生まれです。ガンダムの監督として世界的に有名ですが、若い頃は「鉄腕アトム」から始まり「リボンの騎士」「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」「海のトリトン」など、私が子どもの頃に見ていたアニメをそうとう手がけていらっしゃいます。ジブリの宮崎さんや高畑さんをとっても高く評価していることも有名。ロボット以外のアニメを作りたいという欲求はないのかしら? とはいえ、観客動員数と出資ということを考えると、やっぱりガンダムというツールを利用するのが一番やりやすいのかもしれない。
人類がいかに生き延びなくてはならないか?という問いに対して、一神教が土台の思考はだめで、アジア的な寛容さがあったほうがいいとのこと。一神教的な考え方で、作品を作ってもだめというその理由に、「勝ち負け」「強者・弱者」「○×」に共感する観客が100年後はいないかもしれない、と語っていてその視点がユニークでした。そんな時代が来るのかな?そんなことになったら、オリンピックとかスポーツの視聴率はえらい低くなってるんだろうな。「水戸黄門」とか勧善懲悪系の時代劇の地位もあやういなあ。
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