「カザルスホール・アンサンブル2002」
2000年に「閉鎖」と発表があり、
多くの人の反対や復活の声によって閉鎖を回避し、
今まで存続してきたカザルスホールが、
本当に閉鎖されることになりまして、
最後の「カザルスホール・アンサンブル」
コンサートに行ってきました。
実は、2000年から、
谷川俊太郎さんがコンサートの最初に、
詩を朗読されるという
ん、もー、他では考えられない催しが行われる
本当に贅沢なコンサートなんです。
朗読の詩は初日のバッハの「ゴールドベルグ」と呼応する
「ゴールドベルグ讃歌」という詩で、
たぶん詩集には掲載されていないハズ。
私のもっとも愛する詩のひとつであります。くぅー(感慨無量)。
魂が音と光でできた
螺旋階段をのぼるんですよぉ。
ここでも紹介したいんだけど、 著作権がなあ(ToT)
・・・といいつつ、この詩は、
刊行されている詩集で見たことがないので、
「この詩集を探して!」とご紹介してすむというわけにもいかず、
ってことは、知らない方は一生知らないわけで、
それはあまりにもったいないから、
やっぱり、紹介しちゃおう!
こちらからご一読ください。期間限定で掲載します。
縦組じゃないと、伝わらないので、画像にしました。
ブラウザを最大サイズにして、読んでください。
ところで、カザルスホールといえば、
日本で世界に誇る
室内音楽専用のコンサートホール。
パブロ・カザルスという歴史的なチェリストから
名前をもらったホールです。
弥絵は、クラシックにうといもんで、
このコンサートホールに出会うまで
「室内音楽」というものに触れたことがなかったんだけど、
中世〜近世の宮廷や屋敷で奏でられていた
人間の営みに密着した音楽って感じがして、
とても気に入ったのでありました。
たぶん、もともと、モーツァルトもベートーベンも、
スピーカーが必要となるくらいの巨大なコンサートホールではなく、
室内で奏でられるための音楽だったんだろうし、
生っていうか、
リアルな息遣いがしてよいのでした。
このカザルスホールをプロデュースされた
去年亡くなった萩元晴彦さんも、
小さなコンサートについて、
以下のようなことを語っていて、
こういう場を作りたかったんだろうなあ・・・と、しみじみしたのでありました。
=================================
バントは誰にでもできる 萩元晴彦
小澤征爾とサイトウ・キネン・オーケストラの
感動的な演奏を聞きながら、
ふと高校野球を思い浮かべた。笑わないでください。
「誰もがホームランバッターにはなれないが、
練習すればバントはできる」。
これが私の高校野球論の基本である。
サイトウ・キネンや、ザルツブルグ音楽祭は
ホームランだ。
どんな音楽祭でももっとも大切なのは、
音楽への愛情でなければならないが、
あれだけ巨費を投じ、数百人が関わるものには、
手作りの精神と共に近代的なマネジメントの能力が必要だ。
誰にでもできるというものではない。
しかし、バントは誰にでもできる。
私は仕事で海外によく行くので、
そんな音楽会に何度も出会った。
微笑ましかったのは米・バーモント州のブラッテルボローの音楽会だった。
九十八歳のミェチスラフ・ホルショフスキーが
出演するというので、
私はニューヨークから五時間ドライブして聞きに行った。
開演時間の三十分前には小さな講堂は満員である。
受付で切符をもぎるのも、ピアノを運ぶのも、
平土間だが
ステージの照明を準備するのもボランティアである。
やがてホルショフスキーが出てきた。
彼は高齢で目が弱いから、照明が強すぎて弾けないと言う。
またやり直しだ。
しかし、お客さんは仲間の素人っぽい仕事ぶりを
笑顔で眺めていて、文句なんか言わない。
休憩時間には手作りのクッキーとお茶が出され、
実にいい雰囲気で、
何だか私も住民のような気分になった。
もう何十年もこのシリーズは続いていて、
音楽家はギャラが安いがいい聴衆がいるので喜んで弾くのだという。
こういうバントみたいな音楽会は
一生懸命になれば、誰でも、どこでもできる。
もちろん音楽への愛情と、
知恵とほんの少しのお金も必要だが・・・。
小澤さんの音楽会が素晴らしかったので、
私は余計にそのことを感じた。
ホームランは爽快だが、バントもまた感動的なのである。
(八十二文化財団刊『地域文化』1992年10月号より引用)
=================================
カザルスホールは、小学校の体育館くらいの大きさ。
コンサートホールとしては小さいです。
装飾も派手で豪奢なシャンデリアもないし、
金ぴかでもなく、
一見、朴訥としてるんですが、
細部にこだわった繊細な上品さがあり、
手が届くかも・・・と
思えるなかの、最上級のもの
って感じがするんです。
ヨーロッパのオペラハウスが「夢を見させてくれる場所」だとすれば、
カザルスホールは「自分が豊かになる場所」
って感じ。
音もとってもいいホールです。