「ドントクライ、ガール」ヤマシタトモコ(ゼロコミックス)
うはあ、まいった。すさまじいマンガでした。「このマンガがすごい2011」のオンナ編第2位なんですけどね。内容は万人ウケするものではないのですよ。それがメジャーにねえ。へんてこな時代になったものです。感心です。
物語は、親に育児放棄された女子高生たえ子(まっとうで処女)が主人公。あずけられた先は30代独身のイケメンで、家のなかではすっぽんぽんという変態(妄想好きのマゾなため、現実にはたえ子には手は出さない)。ついでにこのイケメンの親友もイケメンで変態という、彼らの共同生活を描いた爆笑マンガです。このマンガ、表紙絵や紹介文を読んでもおもしろさはわからないので(表紙と内容のギャップが大きすぎ〜)、実際に読んでみることを強くおすすめします。
自分に正直で自然体であるがゆえに変態な男。親のせいでそんな男と同居するはめにおちいったまっとうな女子は、どのように自分の常識と価値観を保ち、また、崩壊させていくのか…。
状況とキャラクターの設定も異例、かけ合いと自問自答と妄想がたいへん多いというところも、少女マンガにしてはめずらしく、たたみかけるセリフの多さにともなうスピード感、ラストまでエスカレートし続けるテンションに感服しました。ページをめくるたびに爆笑です。妄想している人間の妄想のプロセスを克明に描写したものって、はたからみるとおもしろいですよねえ。
特筆すべきは、フキダシのモザイク。フキダシにモザイクがかかっているマンガをはじめてみました。この手法はめずらしいと思います。ストーリー上、そこに入るべきセリフは「×××」や「○○○」ではすまされない、どん引きする下ネタや妄想が入るべきなのです。言葉をおぎなってみたかったけど、その方面の言葉をつかう素養がなかった…。自分ってなんてふつうなんだろうと、想像力の少なさにちょっとがっくりきました。ま、ふつーにだれもが変態なところはあると思うのですが、それを言語化してつまびらかに明かすなんて、しないもんですからね。できなくても当然か。
ところで、このマンガ、登場するイケメン2人の変態度が高く下ネタも多いのですが、Y談的なだけであってで、けしてエッチではありません。それと、主人公がかわいくて、めげないまっすぐな性格であることと、変態さんたちの見た目がさわやかで知的なイケメンであることで、エロがニガテな女子にもおもしろいと思います。逆に、亭主関白さんや男子の沽券にこだわる方には、自分は女子なのであくまでも想像だけど、合わないような気がします。だって、イケメンふたりは変態だけど人畜無害。「ばかでしょうもないけど、かわいい」という描き方は、まるでペットのよう。イケメン2人をしゃべるわんこ2匹に代えても、このマンガのおもしろさは成立しそうです。
「男がわんこあつかいでも、おもしろけりゃいいよね」ってキャパが広い(?)男子は大丈夫だけど、「女の子は守ってやらなきゃ」というようなことを思ってる方には向かないだろうなあ。女が実はたくましくて、男を愛玩的にみなしているところを考えると、このマンガが「このマンガがすごい」でメジャーになったことは、時代なのかなあ? なんてしみじみしました。