ミッシング
今、まさに観るのにジャストタイミングかも
・・・と思ったのでご紹介♪
地味だけど、ジャック・レモンの演技が素晴らしい、
いい映画っす。
1973年9月11日・・・そう、偶然にも
9月11日なんですけど、
南米初のチリの社会主義政権が
軍部のクーデターによって崩壊しました。
貧富の差をなくすため、
海外資本を追い出すなどの
政策を強行に進める当時の大統領に、
保守的な軍部が反対したのが原因。
自由な思想を持つ人々を政治犯として
監禁、拷問、殺害し、
死者は政府の発表では5000人、
NGOの発表では3万人というくらい、
すさまじいありさまだったそうな。
この映画はそのときの実話を元にしてます。
【ネタバレ注意】
世界中のすべてを目で確かめたい・・・と
チリに住み着いたアメリカ人の作家の卵の青年とその妻は
クーデターに巻き込まれ、離れ離れに。
一夜明けると、青年は行方不明になっていて
消息がつかめない。
妻はアメリカにいる義父に連絡し、
息子の安否を気遣った父はすっとんでチリにやってくるわけ。
巨大企業の社長である父は、
チリの政府やアメリカ大使館から手厚くもてなされ、
「息子さんはたぶんどこかに潜伏してるんでしょう」と言われ
放浪癖のある息子よりも、大使館の言葉を信じます。
母国を離れ異国で暮らしている若い二人を、
「おまえたちがいい加減だからだ。
自業自得だ」と攻めるのでした。
が、調べていくうちに、
政府関係筋すべてが結託してウソをついていて、
実は息子は殺されていたということが発覚。
息子はメモを取ることを習慣としていて、
たまたま、アメリカ軍をチリの近くで接触したことを日記に書き、
そのことが、重要機密に触れていたのでした。
実は、このクーデター、ウラでCIAが糸を引いていて、
アメリカ政府はそれを隠したかったのです(実話)。
自らが信じていた国家が、息子の命を奪ったことを知り、驚愕。
「国民を守るはずの国家が、
個人を見殺しにするのか?」と
外交官に問うと、
「国富のため、多くの国民のために
一人くらいの犠牲は仕方ない。 」
息子さんは運が悪かった。
でも、 あなたもチリに工場を持ち、
儲けているではありませんか」
というわけ。国益に個人が翻弄される不条理さ(-_-)。
監督のコンスタンタン・コスタ・ガヴラスは、
実際にあった政治の暗い闇を映画化する硬派なお人。
誠実に真実をあらわにしていくところは秀逸。
また、息子を疑っていた父親が、真実を知るにつれ、
国家を疑いだし、自分の信念を変えていく
ジャック・レモンの演技がすばらしいのなんのって。
特に、息子の死を知った瞬間の、後姿が印象的。
後姿だけで多くを語る稀有なシーンです。
ところで、弥絵が何よりも怖かったのは、
正しい情報が手に入らないという環境っす。
なにが起こっているかわからないうちに、
国家が一夜のうちに、変わってしまうのは、
とても怖いことだなあと、しみじみました。
本当にすごいことが起きるときは、
自覚する前にすべてが終わってるんです。
注意深くならねば、と痛感しました。
・・・ メモ書く習慣があるくらいで殺されるなら、
自分が殺される日が来ても、おかしくないなあと、
またしみじみ(^_^;)